初心者から学べる行動経済学のおすすめ本5選
ある時ある場所でこんな会話がされていました。
自作の撮影ボックスは使いやすいなぁ
なんで、撮影ボックス自作してるんですか?
買ったほうが性能が良いでしょ?
そりゃ、自作のほうが安くて使いやすいからだよ
それに愛着も湧くしね
ああ、なんてことだ。それは「イケア効果」ですよ。
行動経済学の本を読んで勉強しないと
ええ⁉ 「イケア効果」って何!?
私達は時として道理に合わない行動をしてしまいます。
何故、あなたのダイエットは長続きしないのか?
何故、お皿の食べ物は1つだけ残ってしまうのか?
何故、あなたは高価な薬と安価な薬があれば高価な薬を選んでしまうのか?どちらも効果が同じだとしても。
そうした疑問は全て行動経済学で説明できます。
今回の記事では興味深くも奥深い行動経済学の世界が学べるおすすめの本をピックアップして紹介します。
行動経済学とは
行動経済学とはこれまでの経済学の数学モデルに「心理学的事実」を取り入れて今の経済を見ていこうとする学問です。
近年、急速に発展しつつある学問分野でありながら、ノーベル経済学賞受賞者を3名も輩出しています。
【ノーベル経済学賞受賞者】
- ダニエル・カーネマン(2002年)
- バーノン・スミス(2002年)
- リチャード・セイラー(2017年)
行動経済学を学ぶことで人々の行動原理や意欲をどう引き出すかを知ることが出来ます。
行動経済学の多くは私たちが陥りがちな「行動」に理由をつけて教えてくれます。
そのため、経済学を学んだことがない初心者でも分かりやすい本が多く、マーケティングへ活かせる実践的なものが多いです。
かくいう私も行動経済学の世界へ興味惹かれる者の1人となってしまっています。
そんな私が行動経済学を初心者から学べるおすすめの本を5選にピックアップして紹介します。
行動経済学が学べるおすすめ本5選①
行動経済学を学び初めた初心者へおすすめの本は行動経済学を一躍メジャーにしたダン・アリエリの名著「予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版」です。
経済行動に大きく影響しているにもかかわらず、これまで無視され誤解されてきた、人の不合理さを研究するのが、行動経済学という新しい分野である。ユニークで愉快な実験によって、人がどのように不合理な行動をとるのかを系統的に予想することが可能になっている。また、「おとり」の選択肢や、価格のプラセボ効果、アンカリングなど、人の理性を惑わす要素を理解するとき、ビジネスや投資、政治の世界でも、驚くほどのチャンスがもたらされるのだ。
予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版 内容紹介より
本書は私を行動経済学の世界に引きずり込んだ元凶の本です。全編面白いので読み進める手が止まりません。
ダン・アリエリは18の時、全身やけどの大けがで入院しました。
その時、看護師が「勢いよく包帯を剥がしたほうが痛くない」と考えており、ダン・アリエリはそれがとても痛かったと言っています。
その後の実験から看護師の行動は間違っていると分かりました。しかし、彼はそこで「何故看護師」は「正しい包帯の外し方」を知らず、「合理性を欠いた行動」をとるのか疑問に思いました。
この出来事から心理学に興味を持ったことから行動経済学の世界へ足を踏み入れたと本書に書いています。
本中で紹介されるトピックは著者が実際に実験してみたことや身の回りで体験した出来事を行動経済学の知識で紹介しています。
「タダこそ高いものはない」と言葉にあるように「無料」と「有料」のキャラメルを使った社会実験から結論を導き出すスタイルを取っていて、どこを読んでも楽しめる本としておすすめできます。
作中で紹介される行動経済学の実験はビジネスで有効活用できる知識であると同時に読者の知的好奇心を満たす内容です。
「イケア効果」はこの本の内容中に出てくる言葉です。
認知バイアスの一種で奇妙な所有意識として本中で解説されています。
行動経済学が学べるおすすめ本5選②
スティーヴン・D・レヴィットらが書いたヤバい経済学 [増補改訂版] も行動経済学を学べる初心者向けの本としておすすめの1冊です。
アメリカに経済学ブームを巻き起こし、170万部のベストセラーとなった話題の書。若手経済学者のホープが、日常生活から裏社会まで、ユニークな分析で通念をひっくり返します。犯罪と中絶合法化論争のその後や、犬のウンコ、臓器売買、脱税など、もっとヤバい話題を追加した増補改訂版。
ヤバい経済学 [増補改訂版] 内容紹介より
こちらのヤバい経済学 [増補改訂版]は先に紹介した予想どおりに不合理においても言及されているほど有名な行動経済学の本です。
続編も出たベストセラー本です。
本書はアメリカで出版されているだけあり、アメリカでの出来事について焦点が置かれていますが、それが気にならないほどユニークな内容が書かれた本です。
行動経済学を駆使して、犯罪や不正、麻薬密売人の家族構成など一見すると馬鹿らしいような出来事が複数のデータから相関関係を導き出す手法は痛快。
本書を読めば、行動経済学の柔軟な発想が社会の様々な裏を解き明かせてしまうことが理解できるはずです。
本書はそれなりに分厚い単行本として出版されていますが、分厚さが気にならないほどに読み進めることが楽しくなるはず。
統計データを駆使しているので、数字が文中に出てきますが、ある程度読み飛ばしても大丈夫な内容となっています。
行動経済学の初心者向け本としてだけではなく、アメリカの社会についても知ることが出来る読み物として大変素晴らしい1冊です。
行動経済学が学べるおすすめ本5選③
行動経済学でノーベル賞受賞者が出た2017年に刊行された不道徳な見えざる手もおすすめの1冊です。
2001年ノーベル経済学賞受賞者ジョージ・A・アカロフと2013年ノーベル経済学賞受賞者ロバート・J・シラーがタッグを組んで書かれた行動経済学の本です。
結婚式、お葬式、新車購入、住宅購入、金融商品、医薬品、選挙、広告、ポテトチップス、たばこ、お酒…知らずにみんな釣られている。賢いはずのあの人が、なぜカモられてしまうのか?ノーベル賞受賞者による衝撃作!経済とは、釣り師とカモの永遠の闘いである。
不道徳な見えざる手内容紹介より
行動経済学と銘打った本ではありませんが、経済を「釣り師とカモ」に分けて紹介する内容は実に行動経済学的な観点から描かれています。
クレジットカードにまつわる逸話から車のディーラー、アメリカ史に残る金融事件までを網羅したこの本は軽めの経済エッセイながら読み応え十分。
ディーラー達が買手の「人種」と「性別」を見て、値段を変えていた事実なんてまさに「ヤバい経済」ですね。
本書には「アニマル・スピリット」という前作がありますが、本作だけ読んでも十分楽しめますし、こっちのほうが少し安いです。
行動経済学を深く知るという目的より、行動経済学の考え方を日常生活にちょっと利用してみたい、いつもの生活を見直してみたいと思わせる内容は教養書としても見ても面白い。
専門的な用語も作中で多数登場しますが、いずれも解説がされているため、読書中にあれこれ迷子になってしまうことは少ないです。
400ページと少々分厚いですが、暑さに見合った読みごたえを感じることが出来るはず。
経済がどれほど「不合理」で行動経済学的なのかが分かる1冊であり、もっと行動経済学を知りたいと考える人におすすめです。
行動経済学が学べるおすすめ本5選④
ノーベル心理学賞を受賞したダニエル・カーネマンが書いた「ファスト&スロー(上下巻)」は行動経済学を学ぶ上で欠かせない1冊です。
多くの行動経済学の本でも参考文献として名が挙がるほど有名な本です。
整理整頓好きの青年が図書館司書である確率は高い?30ドルを確実にもらうか、80%の確率で45ドルの方がよいか?はたしてあたなは合理的に正しい判断を行なっているか、本書の設問はそれを意識するきっかけとなる。人が判断エラーに陥るパターンや理由を、行動経済学・認知心理学的実験で徹底解明。心理学者にしてノーベル経済学賞受賞の著者が、幸福の感じ方から投資家・起業家の心理までわかりやすく伝える。
ファスト&スロー上巻内容紹介より
不確実な状況下における意思決定論「プロスペクト論」を提唱し、ノーベル心理学賞を受賞した著者による本書はいかに人々の行動が誤った認識の元に行われていたのかを示しています。
何故、人は間違った判断をするのか?
本書は終始このテーマについて挑んでいます。
行動経済学では「いかに人は合理的な判断ができていないか」を解き明かしています。本書ではその理由を読者に「システム1(早い思考)」と「システム2(遅い思考)」の影響が明確な答えであると教えてくれます。
「システム1」の早い思考では「感情」や「直観」に従って日常の判断を行っている。システム1は素早く単純に物事を考えているため、間違えが起きやすいと本書では解説している。
行動経済学で良く知られた「アンカリング効果」「プライミング効果」「ハロー効果」などのテクニックがいかに人間の判断力を奪っているのか、を丁寧に解説しています。
投資本やマーケティングの世界でも必読と称される本書はあらゆるビジネスマンが読むべき本としてもお勧めできます。
意思決定のプロセスを最適化したいビジネスリーダー達におすすめの本です。
行動経済学が学べるおすすめ本5選⑤
2017年ノーベル経済学賞受賞者であるリチャード・セイラーの1冊「行動経済学の逆襲」は実例を行動経済学的観点から紹介している実践的な本です。
伝統的な経済学の大前提に真っ向から挑んだ行動経済学。そのパイオニアが、自らの研究者人生を振り返りつつ、“異端の学問”が支持を集めるようになった過程をユーモアたっぷりに描く。行動経済学は、学界の権威たちから繰り返し糾弾されながらも、どのように反撃して強くなっていったのか?これからどう発展し、世界を変えていけるのか?“ナッジ”の提唱者がすべてを書き尽くした渾身の力作。
行動経済学の逆襲内容紹介より
「行動経済学の逆襲」はリチャード・セイラーの自伝的な物語ですが、同時に行動経済学の歴史や概説を学ぶことが出来る本です。
命の価値を考える1章から始まって、現実世界の矛盾をリストアップしながら解説してくれる内容は興味深くもあり、今起こっている数々の問題がいかに不合理な矛盾を孕んでいるのかを教えてくれます。
行動経済学について始まりから現在までの歴史が描かれた数少ない本の1冊です。
近代経済学と行動経済学の違いや矛盾点が物語調で語られるため、行動経済学だけでなく経済学全般について学びたい人にとってもおすすめです。
行動経済学が学べるおすすめ本5選まとめ
行動経済学が学べるおすすめの本を5冊紹介しました。
行動経済学は経済学の1分野ですが、小難しい統計や確率の知識がなくても楽しめる分野です。
私は経済学を専攻していませんが、当記事でおすすめした本はどれも楽しく読み進めることが出来ました。
行動経済学はまだまだ新しい分野の学問であり、入門本と言ってもほとんどが洋書の類になります。
これまで、なんとなく「選んでいた」選択が行動経済学によって見事解き明かされる様は爽快であり、非常に知的意欲をそそられます。
行動経済学を学ぶことはマーケティングや意思決定だけでなく、あなたのマインドセットを鍛えることに役立ちます。