舞台版『雲のむこう、約束の場所』を見て
こんにちは、アンソニーです。実は今日(2018年5月2日)に千秋楽を大阪で迎えた「雲のむこう、約束の場所」の舞台版を見ました。
この作品は元々、「君の名を」を手掛けた「新海誠」監督が2004年に制作したアニメ映画になります。
それが、今回舞台化されたということで見に行ってみました。
私自身はアニメ映画の方を何年か前にDVDで見たきりで、ストーリーの細部についてはうろ覚えの状態でした。そのためなのか、凄く懐かしい気分で見に行くことができました。
因みに私が舞台を見にいった回数は片手で数えられる程度ですので、舞台俳優さんの演技の評価等は素人判断と捉えてください。
雲のむこう、約束の場所とは?
「雲のむこう、約束の場所」とは2004年に公開された長編アニメ映画です。
ジャンルは、SFモダンファンタジーとでも言えばいいのでしょうか?
【 STORY 】
津軽海峡をはさみ日本が南北に分断された、もうひとつの世界――。引き裂かれた人々、占領されたエゾ(北海道)に高くそびえる謎の塔。
対岸の国境の地、青森に住む二人の少年、浩紀と拓也は、ヴェラシーラと名付けた飛行機を自作し、二人の憧れの少女、佐由理と共に、塔まで飛ぼうと約束する。
しかし、佐由理の突然の転校により、約束は果たされないまま時が過ぎる。やがて海峡間の摩擦は増大、塔の秘密が暴かれるにつれ、あの時の約束が一つの鍵となって、再び三人を結びつける。
あるべき「未来」を取り戻すため、彼らの想いを乗せた飛行機は、約束の地へ飛ぶことができるのか――。
時間軸は現代の日本に近く、もう一つの歴史をたどった日本を舞台としています。
いわゆるパラレルワールドを舞台とした作品ですね。
だから、モダンファンタジーといった感じですね。
初期の新海誠作品らしくSF要素ががっつりと組み込まれた作品です。
新海誠監督はこの作品で2作目ということもあって、「君の名は」のような作品を期待した人は肩透かしを食らうかもしれません。
ぶっちゃけ、初期の新海誠作品はハッピーエンドというよりもビターエンドですので。(私の主観です)
難解なSF要素と良くも悪くも等身大の世界を追求しているために、見終わった後の何とも言えない感じも相まって人を選ぶ作品となっています。
肝心の映画のストーリーの構成ですが、中学3年生だった藤沢浩紀、白川拓也、沢渡佐由理の3人がエゾに立つ塔を目指した甘酸っぱい青春の前半部分と、果たされなかった青春時代の約束を果たす後半部分に分かれています。
映画ではこの三人を主軸として話が進んでいきます。
小説にもなっています。こちらはアニメ映画の内容へさらに補足したものになります。
見た感想
ネタばれ混じってますのでご注意ください!
一言で言いますと、かなり良かったです。
舞台へ足を運んだ時間分は間違いなく楽しめるのではないでしょうか。
初めは私は舞台化すると聞いたとき、舞台?大丈夫? と思っていました。あまり、舞台に行かないことと。出ている人もジャニーズ俳優とかでしたので、ちょっとだけ偏見を持っていました(良くないことですけど)。
ただ、実際に見てみると主要人物の藤沢浩紀、白川拓也、沢渡佐由理の3人を演じた方ははまり役だと感じました。(全員アイドル系でしたが、演技含めて違和感を感じませんでした)
まぁ、アニメ映画のほうの藤沢浩紀は吹き替えがね・・・。
大人時代は良いのですが、中学生というには大人過ぎる声に違和感バリバリだったのもあったのですが、舞台「雲のむこう、約束の場所」では最初から最後まで違和感なく見れました。
というか、演技含めて上手に感じました。最初、大丈夫? とか思っててごめんなさい。
因みに配役ですが、
- 藤沢浩紀:辰巳雄大
- 白川拓也:高田翔
- 沢渡佐由理:伊藤萌々香
舞台の初日あいさつで新海誠監督が「ぴったりの3人」との旨を言っていたようです。
私もそう思います。
若く突っ走ることもありながら、出来事に振り回され悩む藤沢浩紀。
クールでニヒルながらも時折激情を見せる白川拓也
おっとりと七ながらも神秘的な沢渡佐由理
私の持っていた映画の3人のイメージを持ったまま、現実に浮き出たようなキャストで大満足でした。
背景は映画の映像を使用
舞台の上に有る板(多分、反射板)にアニメの映像を映し出し、背景とする演出が印象的でした。
流石にバリエーションは少ないようにも感じましたが、新海誠監督特有の美麗な背景を舞台で見る、という感覚は独特でした。
さすが、アニメ映画の舞台化だからこそできる演出と思います。
やはり、新海誠作品と言えば美しい風景です。それを外さずに舞台に描いてくれたスタッフ一同には感激しました。
これだけでも見る価値はあると思います。
ストーリーはおおむねそのまま。ただし、群像劇寄りに
気になる映画と舞台のストーリーの違いですが、ほとんど映画版と変わりはないように思えます。
強いて言うなら、青森アーミーカレッジの所長が男性から女性に変わったこと、中学生の2人が働いていた工場長の岡部さんの妻が登場する、等が挙げられます(原作じゃそもそも出番少なかったはず)。
これによって、前半から後半への映画版の内容に大人たちの群像劇に近い寸劇が多数挟まれることになっていました。岡部さんや所長さんはストーリ上での露出が増え、かなり印象に残りやすい立ち位置を得ています。
ストーリーの全体上の流れは変わっていませんが、サイドのキャラへのスポットが増えたことで主要3人の露出が結果的に減っているようにも感じました。
群像劇化したといった方がいいでしょう。
でも、舞台上映のほうがアニメの上映時間より長いので、描写自体が増えているだけとも取れます。
ただし、これによって映画「雲のむこう、約束の場所」で指摘されていた後半部分のSF要素の唐突さを解消したようにも思えました。
大人たちへのスポットが増えたことで南北分断の設定やテロ組織の存在、塔の存在感などが増したようにも思えました。舞台の背景とキャラクターたちのストーリーとの関係性が深まったために、より分かりやすいストーリー運びになっている、と感じました。
(映画もそうだという方はごめんなさい。私にはどうしても、映画後半の塔のあれこれは唐突に感じたのです)
結果、新規の人が見てもストーリーに混乱しにくくなり、親しみやすい内容になったのではないかと思います。
ストーリーを削っているわけではありません。
宮沢賢治の詩はそのまま登場しますし、イントロとエンディングでは大人になった藤沢浩紀が登場します。
ラストの飛行機のシーン。沢渡佐由理と藤沢浩紀のやり取りもちゃんと存在します。(新海誠監督らしい切ない台詞です)
全体的な構成もアニメ映画版とほとんど同じのため、原作と違う! などということもあまりありません。
様々な人が舞台を見て楽しめるようなエンターテインメントになったと捉えてもいいのではないでしょうか。
最後に
アニメ映画の舞台化、ということで少し身構えていましたが(実写映画とかの例があるし)、舞台「雲のむこう、約束の場所」に関しては成功の部類と考えていいと思います。
意外とアニメと舞台は親和性があるのかもしれませんね。もっと、舞台化してもいいのよ?
あぁ、新海誠監督の映画まだかな?
